丸谷才一さんの残した言葉【小説家】1925年8月27日~2012年10月13日
「わたしは何かの会合で挨拶をするように頼まれたとき、かならず原稿を作る。即興でやらない。きちんと全文を書いて、それをいちおう誰かに読んでもらって、大丈夫となったものを読み上げるのだ。・・・こんな具合に原稿を書くのは、まず何よりも失言がこわいからなんですね。わたくしは自分が軽卒な人間であることをよく知っている。だから心用するのである。原稿なしで長広舌をふるう政治家なんて人たちは、よほど大胆なのだと思う。偉いな。頭がさがる」 「きょうは暇だから本を読もうというのは、あれは間違いです。きょう暇だったら、のんびりと考えなくちゃあ。考えれば何かの方向が出てくる。何かの方向が出てきたら、それにしたがってまた読めばいい」 「何かに逢着したとき、大事なのは、まず頭を動かすこと。ある程度の時間をかけて自分一人でじーっと考える」 「食通に講釈をさせるのはよい。しかし料理をさせてはいけない」 「ある種の男は、女の愚かしさに夢中になるものです」 日本の小説家、文芸評論家、翻訳家、随筆家。 主な作品に『笹まくら』『年の残り』『たつた一人の反乱』『裏声で歌へ君が代』『女ざかり』など。文字遣いは、1966年から74年までをのぞいて、歴史的仮名遣いを使用。日本文学の暗い私小説的な風土を批判し、軽妙で知的な作品を書くことを目指した。