小柴和正さんの残した言葉【株式会社伊勢丹元社長】1931年~2019年6月21日
「百貨店の価値は何かと問われたら、ライフスタイルのコーディネイト能力だと答えます。」 「生活の中に、新しいもの、美しいものを求め、取り入れようとするのは人間の本性です。世界中から時代の最先端を行くファッショントレンドを発掘し、それをこなれた形で、日本のお客様に提案する。その商品発掘力、目利きの力こそが、他の店では真似できない伊勢丹ならではの強さであり、そこにこだわり続けることが、我々が生き残る唯一の道だと確信しています。」 「高度成長時代の百貨店は、それこそ百貨が買える場所でした。ところが、いまや百貨店は80貨店、60貨店になっています。衣料品も、安い商品を大量に売る専門店が台頭しています。その中で、お客様に胸を張って示せる百貨店の価値は何かと問われたら、私は『ライフスタイルのコーディネート能力』だと答えます。」 「伊勢丹は他の百貨店に比べて決して恵まれているとは言えません。新宿本店は、ターミナル駅から距離がありますし、建物も古く、売り場面積も限界があります。設備機器も最新鋭というわけにはいきません。ハンデを克服して、お客様から支持される店になるためにはどうしたらいいか。8年間の社長在任期間中、私が最も心を砕いたのは、伊勢丹ならではの魅力をお客様にどうわかっていただくか、いかにしてお客様にとってのオンリーワンショップになるかということでした。」 「我が社は1994年に伊勢丹企業理念を策定し、その中で『毎日が、あたらしい。ファッションの伊勢丹』という企業スローガンを打ちだしました。時代を先取りする新鮮なファッションをいち早く発掘してお客様に提案し続けていくことが、伊勢丹の生き残る道であるという決意が込められています。」 「売り場の効率化だけを考えたら、他の商品を置いた方がいいのでしょうが、本店の一番いい売り場に実験的商品を置くことこそが大切なのです。ファッションで生きる伊勢丹の志を内外に示すには、中途半端な形だけでは駄目だと思うからです。『解放区』で新人デザイナーを発掘し、世に出すのは伊勢丹の使命であり、ゼニカネの問題ではないと常日頃から社員にも言っています。」 「商売である以上、売れ筋をきっちり押さえることは大切ですが、お客様にとってのオンリーワンを目指すには、リスクを取って自らの志を貫く強さが大切です。商売と志のバランス。その兼ね合いを計るのも経営者の...