酒井田柿右衛門(14代目) さんの残した言葉【有田焼】1934年8月26日~2013年6月15日
「伝統と言えば古臭いものだと思われるかもしれません。しかし、350年以上の伝統がある柿右衛門は、時代が変わっても変化しないものもあれば、時代とともに変わるものもあります。変わらないものは技術です。伝承された技術の上に、いまの人に受け入れられる作品を作っていくことが伝統だと思います。」 「私は時間があれば、野山の花や鳥をスケッチしています。絵付けのデザイン探しのためです。30枚、40枚とデッサンします。そのデッサンをもとに陶磁器に絵付けしていくわけです。常に時代の生活に合う作品を創作するよう努力してきたつもりです。親父が『伝統とはとどまるものではなく、流れるものだ』と言っていたのは、そのことを表現した言葉でした。」 「伝統とは、いまの地点にとどまることを意味しませんが、そのためにも技術の伝承は大事にすべきです。」 有田焼を代表する陶芸家で、“酒井田柿右衛門”の14代襲名者。本名:酒井田 柿右衛門、改名前-正。 絵付けの基礎となる部分を会得するため多摩美術大学日本画科で日本画を学び、卒業後帰郷して父親に弟子入りする。下積みを重ね父と祖父が蘇らせた“濁手”の技法なども学んでいく。1971年、改名前の本名の酒井田正名義で日本工芸会会員となり、この後のほぼ10年は本名で公募展や個展に出品した。 1982年、父の死を受け14代目を襲名。翌年アメリカ合衆国で「クローズ・アップ・オブ・ジャパン・イン・サンフラシスコ」にて海外で初出品し、サンフランシスコ市長から名誉市民号を贈られた。「14代目柿右衛門展」は国内だけでなく海外で高い評価を集めた。 2001年に重要無形文化財「色絵磁器」の保持者(人間国宝)に認定された。また広く後進の育成にも力を入れ、大学で教えるほか、2011年にはJリーグの地元クラブ・サガン鳥栖のデザインアドバイザーにも就任した。