特攻隊員の遺書 富田修中尉【両親へ】

「父ちゃん!母ちゃん!」

 我一生ここに定まる。
 お父さんへ、いふことなし。
 お母さんへ、ご安心ください。決して僕は卑怯な死に方をしないです。お母さんの子ですもの。
 それだけで僕は幸福なのです。
 日本万歳、万歳、かう叫びつつ死んでいつた幾多の先輩達のことを考へます。
 お母さん、お母さん、お母さん、お母さん!かう叫びたい気持ちで一杯です。何か言つて下さい。
 一言で十分です。いかに冷静になつて考へても、何時も何時も浮んでくるのは御両親様の顔です。
 父ちゃん!母ちゃん!僕は何度もよびます。
 「お母さん、決して泣かないで下さい」
 修が日本の飛行軍人であつたことに就て、大きな誇りを持つて下さい。
勇ましい爆音を立てて先輩が飛んで行きます。
 ではまた。
富田中尉は特攻隊員ではなかった。しかし、その覚悟、気持ちは同じであったということが伺えるご遺書である。

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