特攻隊員の遺書 松尾勲一等飛行兵曹【両親へ】

「ああ玉と砕けん」

 父母上様 喜んでください。勲はいい立派な死に場所をえました。今日は最後の日です。皇国の興廃この一戦にあり、大東亜決戦に南海の空の花と散ります。大君の御楯となって、分隊長をはじめ共にいさぎよく死につき、七度生まれかわり宿敵を撃減せん。ああ男子の本懐これに過ぐるものがまたとありましょうか。これもみな長い歳月強くなれよと育ててくださった父母上と、またわが子のように育て御指導くださった分隊士先輩方々の賜と、あるいはまた血のにじむような訓練の賜と深く感謝いたしております。二三年の幾星霜、良く育ててくださいました。厚く御礼申上げます。今度がその御恩返しです。勲は良くも立派に皇国のために死んでくれたとほめてやってください。ほんとうに兄弟のなかで私は幸せ者でした。喜んでおります。弟も立派な軍人として御奉公できるようにしてください。お願いいたします。もうなにも思い残すことはありません。
 父母上様 こんど白木の箱でかえります。靖国神社で会いましょう。長いあいだありがとうございました。くれぐれも御身御大切になさいますよう。
 ああ雄々しき名も彗星艦爆隊、われら第五義烈隊特別攻撃自爆隊、むかう所は敵空母へ急降下。最後の影をカメラにおさめていただきましたので、いずれゆっくりニュース映画で見てください。ああ玉と砕けん特別攻撃。
咲くもよし散るも又よし桜花

両親に宛てた遺書。心優しく、純粋な若者の心情が伝わってくる。

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