特攻隊員の遺書 海野馬一少佐【我が子へ】

愛児へ

 児等よ嘆ずること勿れ。父の死は決して汝等を不幸にはしない。
 汝等は父の死によって何でもよいから一つの教訓を得よ。
 他の人の得ることの出来ぬ教訓を得よ。そして立派な人間となれ。
 汝等よ。汝等の母は日本一の母なることを汝等に告げる自身あり。
 母の言をよく守れ。母の言は即ち父の言だ。
 和幸君瑞子様誠子様仲よくよき母の許にてよく勉強して立派な人となれ。
 人間は何も高位高官の人となる義務はない。国家のため人にためになる人になるのが人間の義務だ。
 和幸君よ父は汝に将来如何なる職業に進めと云ふ権能はない。
 又汝の性格も判らぬから申さぬ。然し弱きを助けるのが男だ。
 父は軍隊生活中この気概を持してやって来た。
(中略)
 「弱きを助ける人となれ」これが父の言葉だ。汝未だ五才と雖も父の言を忘るる勿れ。
 瑞子様はお姉さまだから父の心がよく判るであらふ。
 和幸や誠子が成長するに従ひ父の心を傳へて下さい。
(後略)

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