特攻隊員の遺書 篠崎眞一少佐【妻へ】

 玲子は日本一、否世界一の妻なりと思ってゐる。苦勞のみかけ、厄介ばかりかけ、何等盡し得なかった事済まなく思ってゐる。
 四月十五日以来僅な月日であったが、私の一生の半分に價する月日であった。
 父母に孝養を盡してくれ、私の分迄。
 私に逢ひ度くば空を見よ、飛行機を見よ、軍艦旗を見よ。私は其処に生きてゐる。
 結婚のすべての手續き、六月十二日に横空で完了して置いた。
 くれぐれも後を賴むよ。私の出来なかった事も玲子には出来る。
 後顧の憂、一つなく征ける身の幸福を感謝してゐる。
 最愛の玲子、御身を常に見守ってゐるよ。

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