特攻隊員の遺書 相花信夫少尉【両親へ】

「母上 お許し下さい」

攻撃隊振武隊に加へられ、國恩に報ずることが出来ました。
 父母上、信夫は勇躍征途につきました。
 父母上、兄上の写真を飛行服に入れて。
 父母上、信夫は子としてあるまじき無礼な言葉遣ひを遂に最後迄矯正せず、唯々漸愧に堪へません。
 母上、六歳の時より育て下されし、生母以上の母上に対し
「お母さん」と呼ばなかつた信夫。
 母上は如何程寂しかつたでせう。
 呼ばふと幾度も思ひましたが、面と向かつては、恥しいやうで言へませんでした。
 今こそ大声で以て呼ばして頂きます。「お母さん」と。
 中支の兄の心境亦等しいでせう。母上、我等兄弟をお許し下さい。
 今、特攻の征途につくに際し、心に掛るは以上の二つのみです。あとは 思ひ残すことはありません。
 人生五十年、自分は二十歳迄長生きしました。残りの三十年は父母上に、 半分づつさしあげます。
 同封の金は母上の好きな煙草代に使つて下さい。
 父母上、では征きます。信夫は莞爾として敵艦必殺へ征きます。


少年飛行兵出身の純真な若者の父、母に捧げた遺書。継母であったらしく、自分の幼いときからの無礼をわびている。ご遺族の事を考えると胸が痛むが、愛情溢れる手紙である。

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