吉田晴乃さんの残した言葉【実業家】1964年4月30日~2019年6月30日

「私は男女雇用機会均等法が施行されて2年目の年代ですが、大学の成績が悪かったから、親のコネでどうにか大手企業から内定をもらいました。ところが卒業時に原因不明の病気になり、4年間も入院。社会復帰した時には26歳になっていました。もう日本企業ではキャリアを積めない。居場所がなくなったので外資系企業にキャリアの道を求めるしかありませんでした。最初に就職したのはモトローラ・ジャパンです。そこで通信という新しい産業と、グローバルにビジネスを展開する面白さに目覚め、仕事にのめり込みました。」


「29歳の時、親の反対を押し切ってカナダ人と結婚し、娘が1歳になる前に夫の都合でカナダに渡りました。私は異国で職を探し、現地の通信会社で営業職として働き始めます。日本人向けのお土産用としてカナダの風景をプリントしたテレホンカードの販売を提案し、街中の店に置いてもらえるように営業しました。また、日本との割安な国際電話プランを提案したところ、これが大当たり。売り上げという数字で結果を出すことで、女性だから、日本人だからといった差別はなくなりました。」


「お子さんがいる方は、ぜひ子育ての経験を大切にしてください。その時期は子育てを優先するのもあり。どうぞエンジョイして。今になって思うのは、子供に愛情を注ぐことがどれほどビジネスパーソンとしての自分を成長させるかということ。子育てには、企業が高いお金を出して提供するリーダーシップトレーニングのすべての要素が入っている。リスクマネジメント、タイムマネジメント、セルフコントロール、ファイナンシャルコントロール……。MBAなんか取りに行く必要はありません。どんなマニュアルにも載っていない知恵が、子供を持った瞬間にDNAからあふれ出てきます。社員みんなが母親のようなメンタリティーで仕事に臨んだら、会社はどれだけ生産性が高くなることか。」


「数字に徹底的にこだわって、数字で自己主張してほしい。ビジネスは数字がすべてです。数字は否定しようのないユニバーサルランゲージ。数字を上げて会社に貢献すれば、必ず評価されます。能力があるなら昇進して当然じゃないですか。私が現在のポジションまで来られたのは、とにかく数字を上げて実績を示してきたからです。実際、『ガラスの天井』を感じたことはありません。」


「戦後70年間、日本人は復興するためにロボットのように働いてきました。これからはAIの時代ですから、AIにできることはAIに任せて、私たちはもう一度人間に戻り、自分らしい生き方を取り戻しましょうよ。」


「50代以上になれば、やはり生物学的にブレーキがかかってしまう。気持ちは前向きでも、できないことが出てくるのです。だからこそ、若いときは懸命に働いたほうがいい。」


「どんな小さな仕事でも会社にとって、どんな意味があるのかを基準に判断する癖をつけておくべきでしょう。自分だけで決められないときは、上司に相談すればいい。」


「『上司の評価が低空飛行』ならば、まず、あなたが会社から何を求められているのか、もう一度考えてみるべきでしょう。上司は必ず、あなたに望んでいる仕事の優先順位と成果に基づいて評価するからです。」


「会社は、ステークホルダーからお金を借りて、利益の一部を返すという集団です。それを構成するのが部であり、課であり、あなたのチームであり、あなた個人なのです。あなたはこのゲームで、どんな役割なのか、結果を出すためにどんな約束をしたのか。そこを考えた瞬間に、自分が何をしなければいけないかがわかるはずです。」


「注意すべきは『あなたを信用しています』『あの課長だけは信頼できる』というような、その人のすべてを盲信してしまう態度です。というのも、いったん関係がこじれたときに、人格すべてを否定してしまう危険があるからです。そうならないためにも、人格ではなく、個々の成果物に対する意見を聞けるような、いい距離感を保つべきなのです。」


「私のような外資の企業にいると、キャリア形成は個々人に責任があるというスタンスです。自分の仕事に対する中長期の目標や研修プランはあなたから発信しなければなりません。成長するも成長しないも遊ぶもあなた次第。」


「私は毎週末に40km走っています。普段、四六時中、仕事のことを考えているので、頭の中を空っぽにできるのは走っている時だけ。最近、膝に水がたまって治療したのですが、痛くても走るのをやめません。無心になれる大切な時間ですから。」


「私がこれからリーダーを目指す、あるいは今、リーダーとして頑張っている女性の皆さんに伝えたいのは、『最高に欲張りな人生を求めなさい』ということです。」


「みんなが自分の時間を大切にして、楽しく幸せであってほしい。それが最高の生産性につながる。」


「心得ておくべきことは、とにかく悪口であれ、批判であれ、絶対利用してやろう、全部肥やしにしてやろうという姿勢を持つこと。」


「グローバルな競争の世界では、何もしなければ、そこで餓えて死んでいくだけ。」


「ワークライフバランスを考える方もいるでしょう。でもそうであればこそ、仕事もプライベートも体当たりすべき。」


「上司と正面切って対話することは、非常に大切です。そのときはもう胸元に突っ込んでいく。とはいえ、上司を傷つけないように気を付けるべきです。」


「20代、30代は自分の力を惜しみなく使って、仕事に体当たりしたらいい。痛い思いをして成長していくことも大事。」


「飛行機は空気の抵抗力がなければ飛べないし、加速もできません。いわば自分のスピードが出れば出るほど、さらに抵抗も強くなる。」


「時代が変われば世の中の価値観なんて変わる。だから他人が何と言おうと、自分を信じ、自分のために生きることが大事。」


「予測可能なこと、確かなものなんて何一つない。この世の中に絶対的なものなんてないんです。でも、瞬間瞬間を100%一生懸命生きる自分だけは信じられる。そう思いながら、私はひた走ってきました。」


「やりたいことをすべてやるというのは、最高の生産性につながります。自分が好きなことを追求し、持って生まれた能力を存分に発揮することは、人間の自然の欲求です。」


日本の経営者。イギリスの老舗大手電気通信事業者BTグループの元日本法人代表取締役社長。元日本経済団体連合会審議員会副議長、内閣府規制改革推進会議委員。経団連初の女性役員。2017年、フォーチュン誌によるWorld's Greatest Leaders 50の一人に日本人としてただ一人選出された。

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