夏目漱石さんの残した言葉【日本の文豪】1867年2月9日~1916年12月9日

「月が綺麗ですね。」


「ああ、苦しい、今、死にたくない。」


「自分のしている事が、自分の目的(エンド)になっていない程、苦しい事はない。」


「時代の風潮、自分を取り巻く環境、さまざまな価値観、それらを正しく見きわめ、自分の判断で行動できるのは、どこにも属さない『迷子』だけだ。」


「表面を作る者を世人は偽善者という。偽善者でも何でもよい。表面を作るという事は、内部を改良する一種の方法である。」


「世の中に片付くなんてものは、殆どありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから、他にも自分にも解らなくなるだけの事さ。」


「金を作るにも三角術を使わなくちゃいけないというのさ。義理をかく、人情をかく、恥をかく、これで三角になるそうだ。」


「他の親切は、その当時にこそ余計なお世話に見えるが、後になると、もういっぺんうるさく干渉してもらいたい時期が来るものである。」


「人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ。」


「人間は角があると世の中を転がって行くのが骨が折れて損だよ。」


「教えを受ける人だけが自分を開放する義務を有っていると思うのは、間違っています。教える人も己れを貴方の前に打ち明けるのです。」


「あらゆる芸術の士は、人の世をのどかにし、人の心を豊かにするがゆえに尊い。」


「道徳に加勢する者は、一時の勝利者には違いないが、永久の敗北者だ。自然に従う者は、一時の敗北者だが、永久の勝利者だ。」


「自分の好きなものは、必ずえらい人物になって、きらいなひとは、きっと落ちぶれるものと信じている。」


「自己を捨てて神に走るものは神の奴隷である。」


「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼等何者ぞやと気概が出ました。」


「四角の世界から常識と名のつく一角を摩滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでも良かろう。」


「運命は神の考えることだ。人間は人間らしく働けばそれで結構だ。」


「鏡は自惚れの醸造器である如く、同時に自慢の消毒器である。」


「細君の愛を他へ移さないようにするのは、夫の義務である。」


「全ての夫婦は新しくなければならぬ。新しい夫婦は美しくなければならぬ。新しく美しき夫婦は幸福でなければならぬ。」


「恋心というやつ、いくら罵りわめいたところで、おいそれと胸のとりでを出ていくものでありますまい。」


「恐れてはいけません。暗いものをじっと見つめて、その中から、あなたの参考になるものをおつかみなさい。」


「色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず。」


「自由な書を読み、自由な事を言ひ、自由な事を書かんことを希望いたし喉。」


「ナポレオンでもアレキサンダーでも、勝って満足したものは一人もいない。」


「金は大事だ、大事なものが殖えれば寝る間も心配だろう。」


「離れればいくら親しくっても、それきりになる代わりに、いっしょにいさえすれば、たとい敵同士でも、どうにかこうにかなるものだ。つまりそれが人間なんだろう。」


「のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。」


「嬉しい恋が積もれば、恋をせぬ昔がかえって恋しかろ。」


「前後を切断せよ、みだりに過去に執着するなかれ、いたずらに将来に未来を属するなかれ、満身の力を込めて現在に働け。」


「真面目に考えよ。誠実に語れ。摯実に行え。汝の現今に播く種は、やがて汝の収むべき未来となって現わるべし。」


「うそは河豚汁である。その場限りでたたりがなければ、これほどうまいものはない。しかしあたったが最後苦しい血も吐かねばならぬ。」


「もし人格のないものが無闇に個性を発展させようとすると、他を妨害する。権力を用いようとすると、濫用に流れる。金力を使おうとすれば、社会の腐敗をもたらす。随分危険な現象を呈するに至るのです。」


「ある人は十銭をもって一円の十分の一と解釈する。ある人は十銭をもって一銭の十倍と解釈する。同じ言葉が人によって高くも低くもなる。」


「青年は真面目がいい。」


「嫌な女も好きな女もあり、その好きな女にも嫌なところがあって、その興味を持っている全ての女の中で、一番あなたが好きだと云われてこそ、あなたは本当に愛されているんじゃありませんか?」


「自らを尊しと思わぬものは、奴隷なり。」


「人間の目的は生まれた本人が、本人自身のためにつくったものでなければならない。」


「考えてみると世間の大部分の人は悪くなることを奨励しているように思う。悪くならなければ社会に成功はしないものと信じているらしい。たまに正直な純粋な人を見ると、坊ちゃんだの小僧だのと難癖をつけて軽蔑する。」


「馬は走る。花は咲く。人は書く。自分自身になりたいが為に。」


「わざわざ人の嫌がるようなことを云ったり、したりするんです。そうでもしなければ僕の存在を人に認めさせる事が出来ないんです。僕は無能です。仕方がないからせめて人に嫌われてでもみようと思うのです。」


「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ。」


「君、弱い事を言ってはいけない。僕も弱い男だが、弱いなりに死ぬまでやるのである。」


「たいていの男は意気地なしね、いざとなると。」


「愛嬌というのはね、自分より強いものを倒す柔らかい武器だよ。」


「女には大きな人道の立場から来る愛情よりも、多少義理をはずれても自分だけに集注される親切を嬉しがる性質が、男よりも強いように思われます。」


「私は冷かな頭で新らしい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べる方が生きていると信じています。」


「自分の弱点をさらけ出さずに人から利益を受けられない。自分の弱点をさらけ出さずに人に利益を与えられない。」


「君は山を呼び寄せる男だ。呼び寄せて来ないと怒る男だ。地団駄を踏んでくやしがる男だ。そうして山を悪く批判する事だけを考える男だ。なぜ山の方へ歩いて行かない。」


「あせってはいけません。ただ、牛のように、図々しく進んで行くのが大事です。」


「のどかな春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし、また鳴き暮らさなければ気が済まんと見える。その上どこまでも登って行く、いつまでも登って行く。雲雀はきっと雲の中で死ぬに相違ない。登り詰めた揚句は、流れて雲に入って、漂うているうちに形は消えてなくなって、ただ声だけが空の裡に残るのかもしれない。」


日本の小説家、評論家、英文学者。本名は夏目 金之助。俳号は愚陀仏。代表作は『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こゝろ』など。明治の文豪として日本の千円紙幣の肖像にもなり、講演録「私の個人主義」も知られている。漱石の私邸に門下生が集った会は木曜会と呼ばれた。 江戸の牛込馬場下横町出身。

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