西田厚聰さんの残した言葉【東芝】1943年12月29日~2017年12月8日

「生活のレベルが上がり、ライフスタイルもワークスタイルも大きく変わった現代において、日本人やアメリカ人に、以前のようなハングリー精神を持てと言っても、もはや通用しない。三か月程度の短期間ならばガムシャラにできるかもしれない。でも何年にもわたってやってくれといっても無理なんです。」


「力をすべて出しきらず、来期に残したからといって、来期にその力を使うチャンスがあるかどうかわかりません。だから社内には、最後までギブアップせず、とにかく今期のことを頑張ってほしいと言っています。東芝にはそれだけの潜在力がある。それを引き出すのが私の仕事です。」


「開発技術者なら、良い仕事を出したときの達成感、充実感は長く続くと思います。しかし営業マンは毎月毎月の予算を達成しなければいけないので、達成したと思ったら翌日から次の高いバーが待っています。いわば瞬間の達成感に満足する人でなければいけません。」


「営業は余力を残さずやってくれ、と僕は言っています。だから、その期にあげられる売上は、すべて売り上げていると思いますが、仮にもう一息、プラスアルファが欲しいという事態になったときには、上積みすることができます。そういう実力を持っていなくてはいけないと思います。それは日ごろのお客様との付き合いや信頼関係がモノをいいます。」


「商品開発に営業の人たちが最初から関わることで、顧客の声が商品に反映します。」


「コモディティーの定義は様々ですが、『競合相手が必ずいる』と定義してみると東芝製品の90%以上がコモディティーに分類されます。火力発電所でさえも該当します。つまり、グローバル市場での競争で勝つためには、大半を占めるコモディティーに対応した経営が必要になります。」


「高度成長期、日本企業の間では、『シェアか利益か』『品質かコストか』といった議論がありました。日本市場全体が成長しているときにはこうした二者択一でも通用したのでしょう。現在の市場環境では、この相反する両要素をバランスよく追求していかなければ、生き残りは難しいのです。」


「イノベーションを誰もが起こせるようにするには、新しい発想が浮かぶように、従業員の余裕も必要でしょう。朝から晩まで目先の仕事に追われ、さらに残業、休日出勤では、イノベーションの発想自体生まれません。」


「東芝の成長を支えているのは、組織の成長、組織力です。組織は個人からなっており、個の力を大きくしながら、ベクトルを合わせれば全体の成長につながります。」


「どんなに情熱を持って取り組んでも、負けでは意味がありません。市場経済のコンセプトは、競争の中で成長を実現していくことにあります。自分たちが競争している相手とのベンチマーキングが常に大事になります。」


「イノベーションは誰もが起こせるようにすることが肝要です。現場の改革意欲を受け入れる組織風土の醸成が必要です。新しい提案に対し、上役が『失敗したらどうする』などと言うようではいけません。」


「東芝として、コアになる事業、成長させる領域をしっかり定めなくてはなりません。シナジー効果を期待できないコア以外の事業は、撤退も考えます。経営資源は限られています。成長を支えていく重要なものに、より資源配分する必要があります。」


「大事なことは、市場の声、顧客の声を反映させていくことでしょう。その声に接する機会が多い営業担当は、商品の開発にまで関わる必要があります。」


「イノベーションは『革新』『技術革新』と訳されることが多いですが、私は『創新』が的確だと考えています。東芝では市場に存在しない新しい価値を提供できるような事業や製品を生み出すことを『バリュー・イノベーション』と定義しています。」


「私は、イノベーションが、継続的な成長を生み出す唯一のファクターだと信じています。」


「イノベーションには革新的技術で社会に新しい価値を提供する『バリュー・イノベーション』のほかに、日々の業務プロセスにおける『プロセス・イノベーション』があります。新しい市場をつくりだすような『バリュー・イノベーション』からなる事業というのは、じつは事業全体の10%に満たない。つまり、革新的技術の創造にばかり力を入れても、残りの90%の部分に力を入れなければ、持続的な成長は難しいわけです。」


「ビジネスとは、いってみれば、市場環境の変化など、時代がつくりだす状況と相関関係にある関数です。つまり、時代の状況が変われば、経営の重要なポイントも変わってくるのです。状況が変われば事業の優劣関係もコロッと変わるかもしれません。ですから、常に選択と集中の判断をする必要があります。」


「半導体は3年で投資が回収できなければ成り立たない事業です。原子力は20年から30年のタイムスパンで収益性を考えなければいけない事業です。事業に応じたスピード、経営の判断基準があるのです。」


「自分の任期中に成功させる事業だけを考えていては駄目なんです。自分の任期を超えて、事業を持続的に成長させなければいけません。5年先、10年先を常に考え、結論を導き出し、決断することができるのは社長以外にいませんから。」


「毎日の仕事の中で、いかに従業員全員が、新興国のハングリー精神に対抗できるだけの姿勢をとれるか。私は緊迫感、緊張感、焦燥感といった危機意識を持つことが大事だと言い続けています。常に全員が、言われたとおりの仕事だけをやるのではなく、もっと視野を広げて、事業ごとの業界の動きを把握しながら、2~3年後の将来に向けたベンチマーキングをするのです。」


「よく『組織のベクトルを合わせる』といわれますが、ベクトルだけを合わせても、各々のベクトルを構成するスカラー(量)そのものが大きくなければ、組織トータルの力はさほど変わらないのです。個々のベクトルのスカラー、つまり、従業員一人一人が成長したうえで、ベクトルを合わせれば、その組織力というのは、格段に大きなものになるでしょう。」


「構造改革とは、組織に内向きのものですので、縮小均衡に傾きがちです。大規模な構造改革に一応の目途がたった現在、次の成長戦略へ向けて、社内の意識を変えていく段階に入っています。」


「人間は非合理的な感情を持った動物ですから、体系的な手法では解決できない非合理的な側面をたくさん持ち合わせています。できなければ恥ずかしいとか、負ければ悔しいといった、人間の原初的な感情が強靭なバネとなって、ものごとに邁進する強い情熱を掻き立てます。目的を達成しようとする強い意志を備えた情熱が、事業を遂行し、競争を勝ち抜く力となります。」


「事業とは成長しなくては意味がありません。成長してなおかつ役に立つ商品を手掛けたいと思っています。」


「大きく攻めた方がいいときもあるし、小さく攻めた方がいいときもあります。」


「守りも必要です。でも、守ってばかりいては先に進めません。失敗することがあるかもしれませんが、そのときはそこから学べばいいのです。」


「企業の成長に、スピードとタイミングは必須の条件です。市場の競争原理のもとでは、つねに一歩先を読み、先手を取らなければいけません。後手に回った途端、コストは倍に膨らみます。」


「リスクは冒します。しかし、ビジネスは賭けではありませんから、決して無謀なことはしません。」


日本の実業家。学位は法学修士。名の「聰」は旧字体のため、報道等においては西田 厚聡とも表記される。株式会社東芝取締役代表執行役社長、株式会社東芝取締役会長、社団法人日本経済団体連合会副会長、学校法人沖縄科学技術大学院大学学園理事、公益財団法人国際研修協力機構代表理事会長などを歴任した。

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