渡辺英彦さんの残した言葉【B-1グランプリ仕掛人】1959年2月3日~2018年12月19日

「すべては『ネーミング』です。市のイベントで知り合ったNHKの記者に『富士宮やきそば学会という組織があり、そのG麺が市内のやきそば店を夜な夜な調査して回っているんです』という情報を流した。単に『やきそばを使った町おこし』では面白くない。庶民的な『やきそば』にアカデミックな『学会』を足せば、うさんくさくて『何、それ?』と興味を持ってもらえるかなと。活動についてもはじめに言葉ありき。中身は後からともなうと考えました。結果、NHKのニュースで取り上げられました。」


「手書きの文字は、絵画や書と同じです。自分の考えを自分の手、自分の技術、自分のセンスで形作る。私の場合、この作業をしている時に『ひらめき』が生まれる確率が高い。」


「ひらめいたことはすぐに文字にし手帳に書き留めます。メモが増えて混在し、どれがどれだか分からなくなるのを避けるために、書き留めた言葉を改めてネーミングやフレーズにまとめて、50音順にファイリングする。手帳でブレーンストーミングしている感じですね。」


「仕事柄、国内の移動が多く、電車やホテルなど様々な場所で記入するので、手帳1冊にたくさんの機能を持たせた方が便利なんです。これさえあれば大丈夫という安心感もあります。」


「いまは、美味しいというだけで売れる時代ではありません。まちおこしの相談で各地に行くと、『来てみて食べればわかるはず』ってみんな言うけれど、それじゃ駄目なんですよ。だって、『行ってみて食べなきゃわからない』わけですから。まず、『行って食べてみよう』と思ってもらうような話題を提供することが必要なんです。初めにうまいものありきではありません。うまい話ありきです。」


「まちおこしには補助金がつくことも多いですが、もらえるお金をあてにすると、その範囲でしか活動を考えなくなります。それに補助金なんて、いつかは減らされたり、なくなったりするものです。そのときにまちおこしの活動自体がなくなってしまっては、意味がありません。」


「コンセプトとパフォーマンスは分けて考えないといけません。両方とも真面目にやろうとするから失敗するのです。」


「もちろん、カップ麺なんて偽物だという批判もあります。でも、私はやきそばを売っているんじゃなくて、地元の名前を売っているんだから、それでいいと思っています。地元の味を守ろうとか、地元の食材にこだわるという視点も大切だとは思いますが、地産池消だけでは広がりは期待できませんから。」


「まちおこしというと、イベントをやったり、新しい商品をつくったりするのがよくあるパターンです。でも、我々にはそんなことをするお金はありませんでした。だから代わりに、話題をつくったんです。この街には『富士宮やきそば学会』という組織があり、『やきそばG麺』と呼ばれるメンバーが、手弁当で市内のやきそば店の調査活動をしている、と。」


「ネーミングでオヤジギャグはものすごく大事にしています。だって、キャッチーだし、誰でもわかりやすいですから。富士宮と同じく、やきそばでまちおこしをしているのが秋田の横手市と群馬の太田市なんですが、3つの市が普通に『やきそばの食べ比べイベント』をやったって、地元のメディアが取材するくらいでしょう?でも『三者麺談』と銘打てば、全国にニュースが流れる。おまけに『三国同麺』という協定を市長が調印するとなれば、メディアの反応がまったく違う。言葉ひとつの効果は計り知れないわけです。」


「つくり手の立場ではなく、消費者の立場に立つべきです。食べる人・買う人の気持ちになって、どうやったら興味を持ってもらえるかに集中する。それこそが、私のような人間の役割だと思っています。」


「町おこしのカギはネーミングです。名前を聞いた時に、面白そうだなと興味を持ってもらうことが大切です。」


食による地域ブランド確立および活性化戦略における日本の町おこしの第一人者、食文化プロデューサー。 B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会代表理事。富士宮やきそば学会会長。社団法人富士宮市地域力再生総合研究機構 理事。NPO法人「まちづくりトップランナーふじのみや本舗」理事。

2000年に「富士宮やきそば学会」を設立。地元で食べ続けられてきた特徴ある「富士宮のやきそば」に着目、様々な企画を通して情報発信することにより、10年間で約500億円の経済波級効果を生み出し、観光客の増加につなげる。

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